木村尚仁研究室のブログ

木村尚仁研究室(物理的デジタル情報研究室)[北海道科学大学の工学部・電気電子工学科および北方地域社会研究所(RINC)]のブログです。

2019/10/26〜27 わくわく☆どきどきサイエンスキッズを開催しました!

札幌市子ども会育成連合会(札子連)主催による「わくわく☆どきどきサイエンスキッズ」,昨年度に本学で開催したところ大盛況を頂きました。これを受けて,昨年度は北区・西区・手稲区に住んでいる小学4・5年生を対象としていたところ,今年度は札幌市全域に広げ,また開催も2日間に拡大。2019/10/26(土)と27(日)の各日午前と午後の2回,全4回実施することとしました。お陰様で160名募集のところ,2.7倍のご応募を頂き,泣く泣く抽選をさせて頂きました。

  
なお今回の実施に当たって,札幌市教育委員会,札幌市小学校長会、電気学会北海道支部、電子情報通信学会北海道支部、応用物理学会北海道支部、北海道工学教育協会よりご後援を頂きました。ご協力に感謝申しあげます。
 

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さて今年度のテーマは「Scratchを使ったプログラミングによるオリジナルクイズゲームゲームづくり」。来年度から始まる小学校でのプログラミング教育の必修化を前に,多くの学校で利用が予定されている見込みのScratchを使ったワークショップです。ただし今回は意図的に,これまで私達が行ってきた科学モノづくり講座とはやり方をかなり変え,私達自身かなり実験的な試みを行いました。多くの子供たちが楽しみに参加してくれる中で,結構リスクもあったのですが,結果的には大成功でした。これは,参加してくれた熱心な子供たちやスタッフの皆さんのおかげです。

今回の講座では,プログラミングを学ぶと言うよりは,そもそもMITメディアラボのレズニック教授主宰の「ライフロングキンダーガーデン」研究室がScratchを開発してきた趣旨を意識し,子供たちに自由な発想によるアイディアを形にしていく楽しさを実感してもらうことをめざしました。このねらいを強く意識したのがこれまでの私達の講座との大きな違いです。ただ今回,時間の制約もありましたので「自由さ」は限られてしまいますが,その中で可能な範囲に内容を落とし込むよう,ワークショップのデザインを行いました。

 

会場は本学・北海道科学大学の新しいF棟のF314実験室(電気電子工学第2実験室)。通常は学生実験などで使用する実験教室です。教卓のPCや資料提示装置の画像を,受講者の各テーブルに置かれたディスプレイ2台に配信し,教員のマネをしながら作業を行う「新・まねびシステム」が設置されています。

テーブルは10台。今回は各テーブルに4人ずつ座ってもらうこととし,あらかじめPCを起動,ネットに繋げ,ブラウザにScratchのサイトを表示させるところまでは,アルバイトスタッフ8名の学生たちに準備してもらいました。

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4回とも進行はほぼ同じです。ワークショップ開始の1時間くらい前にはもう会場に来られる親子もいらっしゃいます。今回のワークショップでは,私(木村尚)がScratchの教師用アカウントを取得し,各回ごとのクラスを作っておきました。あらかじめクラス受講者のアカウントを作成し,受付時にユーザ名とパスワードを渡します。設営ができていれば直ぐに席についてもらい,起動してあるPCや,テーブルに置いてあるScratchカードを自由に触って待ってもらいます。「キーボードやマウスをいじってるくらいでは,ちょっとやそっとじゃパソコンは壊れないから,自由に遊んでいていいよ」と声かけもします。PCはすでにScratchが使える状態になっており,特に使い方を教えずに何となくでも触って慣れてもらいます。また札子連の皆さまに用意してもらったScratchカードも各テーブルに置いておき,子供たちや同行の保護者の皆さまにも自由に見てもらうようにしました。学生たちがときどき,子供たちの様子を見ながら「こんなことができるよ」と,ちょっとした使い方を教えてくれたりしています。

時間になったら主催の札子連のスタッフの方の司会でスタート,趣旨説明や挨拶などを行い,早速プログラミングワークショップ開始です。まずはアイスブレイクとして,各テーブル内で自己紹介。札幌ではちょうど季節の替わり目だったので,好きな季節と名前などを順番に言ってもらいます。テーブルを回ってみながら,しゃべるのが苦手な子にはちょっと手助けなどをします。この辺の対応は,今後はスタッフ学生とあらかじめ打ち合わせておいた方が良さそうです。

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ついでマウスの使い方について「クリック」,「右クリック」,「ダブルクリック」,「ドラッグ」などの言葉と一緒におさらいをします。そして,受付で渡したアカウントで各自サインイン。ここで参加の子供たちのキーボードによる文字入力の様子を見ておきます。ある程度慣れている子も,ぎこちない子も色々います。サインインができたら,ごく簡単にだけプログラミング画面の説明をして,あとは一緒にディスプレイ画面に映る私の作業のマネをしてもらいながら,プログラム要素のブロックをつなげて,スプライト(Scratchの画面上のキャラクタ)を動かすという,もっともシンプルなプログラムを作り実行します。その次にスプライトにセリフを言わせ,音を付けるなど,プログラムを付け加えていきます。この一連の作業によってScratchの基本的な使い方と,またどのようなブロックが用意されているのか大体の感触を知ってもらいます。また,プログラムは一度ベースを作って,あとからどんどん機能を付け加えて発展させることができることを実感してもらいます。
 
できればここで一旦充分に間を取って,自分で新たに自由にブロックを加えてプログラミングを楽しんでもらいたいところですが,時間のことがあるのでぐっと我慢して次に進みます。

 

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今回の本題はクイズゲームを作ること。その例をいくつか見せた上で,クイズゲームのアウトラインを説明します。これも本当であれば制約なく,かなり自由に作らせたいところなのですが,スタッフの人数と時間を考えるとそうも行きません。今回は共通して,

  • メインのキャラクター(スプライト)が問題を出す
  • 2〜3つくらいの別のキャラクター(スプライト)がいろいろな答え(せんたくし)を言う
  • 正しい答えのキャラクター(スプライト)をクリックすると,「せいかい」などと言う
  • 間違った答えのキャラクター(スプライト)をクリックすると,「ちがうよ」などと言う
  • 時間があれば効果音や背景をつける

という内容にしましょうと説明します。しばらく時間を取って,受け付けであらかじめ渡したワークシートに,問題文と答えの選択肢,使うキャラクター(スプライト)を書いてもらいます。「周りの子や,学生のお兄さんと相談してもいいよ」と伝えておきます。

またこのタイミングで休憩時間を取り,トイレに行ったり飲み物を取ってもらったりします。その間も子供によっては問題を考え続けています。このあたりで様子を見て回ると,地理や歴史,恐竜,昆虫,宇宙など,自分の興味にしたがって色々な発想で大変おもしろい問題を作っている子がたくさんいることがわかります。中には大変専門的な歴史クイズのような問題を作っている子がいたので,「歴史が好きなの?」と聞くと,「いや,別にそういう訳では」と言う子も。そのときたまたま知っていたことを問題にしてみたようで,そのような反応も私としては大変楽しい経験でした。
一方で,なかなか問題を作れない子もいて,そういう場合は一緒に問題を考えます。極力こちらからは問題例を言わないようにして,その子の興味があることや,好きなスポーツ,食べ物,ゲームなどを聞き出しながら,できるだけ自分で問題を思いつくように手助けします。ただ,それでもなかなか思いつけない子も中にはいるので,その場合はもうちょっと踏み込んだアドバイスをします。
何となくの感触ですが,問題づくりで悩んでいる子も,あとほんのちょっとした切っ掛けがあればできるのだけど,その手前で進めなくなっているという感じがします。自分が知っていること,分かっていること,やりたいことと,「問題をつくる」という行為とにやや隔たりがあって,回路がもうちょっとのところで繋がっていない,あるいは尻込みしてしまっているという感じ。ここも本当であれば,スタッフの人数と時間の余裕を充分に取って対応できるようにしたいものです。
   

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休憩後,いよいよScratchでクイズゲームを作っていきます。今回,使うキャラクターや問題内容はぞれぞれ異なるものの,アウトラインは概ね揃えてあるので,ここも私の作業をマネしてもらいながら各自で作っていきます。

ちなみに,中にはScratchに慣れていて,説明を待たずにどんどん自分で作り進めたり,独自路線で作っている子も少なからずいました。その場合はその子に任せて,好きなように自由に作ってもらいますが,その中で相談や質問があれば,私や学生たちがアドバイスします。

まずは一番シンプルに,メインキャラクターが問題を出し,サブキャラクターが答えの選択肢を言う。それに対し正解のキャラクター,あるいは不正解のキャラクターをクリックすると,それぞれのセリフを言うというベースとなるプログラムを作ります。
それができたら正解時,あるいは不正解時の効果音をつけます。
さらに,正解時にそのキャラクターがはしゃいで動き回るなどの動きもつけます。
もっと時間の余裕があるときは,背景もつけました。
これでオリジナルクイズゲームの完成。4回ともほぼ全員完成させることができました。

 

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完成後,自分のゲームを見せ合う時間も取り,お互いにゲームを楽しんでもらいました。

 ただ中にはちょっと凝りすぎて,思った通りには完全にはできなかった子もいました。いつもの私達の講座であれば,完全に完成させて帰ってもらうのですが,今回はそれがちょっと残念でした。やはり時間とスタッフの余裕は重要です。

最後に,帰ってからさらにScratchを楽しんでもらうために,サイトへのアクセス,サインインなどの方法,参考になる本の紹介などを行いました。

 

ワークショップ終了後,再び札子連の方の司会で 閉会式を行い,全員で集合写真を撮って解散です。

2日間,4回の講座,すべて無事に終了しました。参加の小学生の皆さん,保護者の皆さん,札子連のスタッフの皆さん,そして学生スタッフの皆さん,誠にありがとうございました。
 
なお参加の子供たちのアンケートの集計結果を次に示します。
まずは満足度の高い,プログラミングによるモノづくりを楽しいと思ってもらえる体験を提供できたかと受け止めています。
ただし,さらにモノづくりを通しての創造的な学びのためのワークショップを推進していくためには,ファシリテータのスキルアップ,余裕のある時間配分,スタッフの人数確保が大切であるということも,改めて実感しました。これを踏まえて,当研究室では今後も取り組みを進めていきます。

  
さてアンケート結果を見ると,ほとんどの子が「とても楽しかった」と答えてくれました。「少し楽しかった」も含めると,全員が楽しかったと感じてくれたようです。
また一方で,「ちょっと難しかった」が36%。私達はこれまでも「難しい」けど,だからこそ「楽しい」モノづくりを経験してもらうことをめざしてきました。今回もそのねらいからは,ずれてはいなかったと受け止めています。

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また,自由に書いてもらった「思ったこと」は次の通りです。
回答ありがとうございました。

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